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聖学院小学校 村山順吉校長先生

2014年12月に完成した新校舎での新しい学校生活がスタートしたばかりの聖学院小学校。子どもたちが安心して、そこにいられることが嬉しくなる校舎とは?その魅力についてお伺いしました。

新校舎をご案内いただく前に、この校舎に込められた思いを教えてください。

聖学院小学校聖学院小学校

はじめに考えたのは、学校が子どもたちの存在を大切にする場所でありたいということです。現在は、少子化の影響もありますが、子どもたちが大人を中心にした環境の中にいることが多くなっています。たとえば、都内の公園に「よい子は大きな声を出しません」という看板があるぐらい、子どもにとっては気をつかう空間ばかりで、自分らしさを発揮できる場所がどんどん少なくなっています。ですからいっそう、学校は子どもたちの存在を大切にし、そのことを基として営みを進めていく場所でありたいのです。学校は当然学習する場所ですが、子どもの日常や人間関係など、将来一人の社会人として世の中に出ていくために、そこに向けてよい経験ができる場所でもあるべきです。そこで、新しい校舎を建てるにあたり、子どものアイディアも活かしていこうと考えました。全校生徒に紙粘土で理想の校舎を作ってもらったのです。いろいろなものがありました。グラウンドが全面野球場だったり、水族館だったり、モノレールが駒込駅から屋上まで通っているものや楽しいものがたくさんありました。その中にツリーハウスがありました。ちょうど東京スカイツリーの竣工の時期だったこともあるのでしょう。似た発想のものがいくつかありました。これらの作品に込められた子どもたちの思いはどれもすばらしいものでしたし、子どもたちが校舎というものに夢をもっていることがよくわかりました。そこで、たくさんのアイディアの中からツリーハウスを活かした校舎をつくろうと考えました。

それでは、学校を一番下の階から順にご紹介ください。地下のフロアからお願いします。

聖学院小学校聖学院小学校

校舎を建てる上で私たちがもうひとつ考えたのは、本校はキリスト教を基とした学校ですから、それをどのように校舎に取り入れていくかということでした。教会で唱えられる使徒信条に端的に表されていますが、キリストは十字架につけられて、葬られ、陰府(よみ)に下り、そこから復活されます。キリストはまずはじめに理不尽な辛い立場を自ら引き受けられたわけです。私たちが苦しみ一歩も前に進めなくなったときに、いちばん底の部分でキリストは待っていてくださり、そこで出会い支えてくれます。そして、それは彼らが小学校で過ごす6年間だけのことではないのです。卒業後も彼らの心の土台として支え続けてくださる、その思いを具現化し、新しい校舎では、チャペルを一番下、地下に置くことにしました。それぞれのフロアには名前がありますが、地下1階を「祈りのフロア」と名づけました。

1階を紹介してください。

一番下の「祈りのフロア」でどう生きるか、人とどう関わるかを学び、そこから進んでいくと実際にいろいろな人との出会いが待っています。そこで1階を「出会いと交わりのフロア」と名づけました。階段から上がったところに英語室を配しました。英語はもちろん語学として大切ですが、異文化に生きる人たちとどのように接点をもっていくか、お互いをリスペクトしながら交わっていくために英語教育をしたいと思い英語室をこのフロアに置きました。異なる文化をもつ者同士が互いを理解し、融合しあうことを象徴するように、色も工夫して、反対色といわれる緑と茶色の2色でまとめています。

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また、聖学院小学校では新校舎完成とともに、スクールランチ(給食)を導入しました。ただ、我々はお弁当も大切だと考えています。作ってくださる、ご家族の方の愛情をいただいて成長することは子どもたちにとってかけがえのないことだからです。そこで、学年を半分に分け、今日は1組、翌日は2組というように、週の半分が給食という形にしました。ひとつのテーブルに席を6席設け、各学年1名ずつ1年生から6年生までが同じテーブルで食事をとるようにします。6年生はテーブルマスターとしての仕事がありますが、どの学年の子どもにもそれぞれの役割があって、楽しい食卓になるように考えてもらいたい、そこに新しい出会いと交わりが生まれるわけです。そのためスクールランチのスペースも1階に置いています。

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理科室も1階にあります。これは自然科学との出会いです。科学者には、自然が神の造ったものであるならば、自然は第2の聖書である、自然の中にある現象や営みを探求していくことは神のなさったことを解き明かしていくことに通じると言う人もいます。自然科学としっかり向き合っていくことで、人間のありようを学んでいく、そんな思いで理科室も1階にしました。図工室も1階です。ものを生み出すということで、自分との新たな出会いがあり、また合作を通して共に製作するその時々の仲間との交わりによってのみ見つけられる未知の自分との遭遇があります。
フロアとフロアの間、階段の踊り場のところを、階段室と呼んで、場所ごとにいろいろな木の名前をつけています。ここも力を入れたところなのですが、階段室は木の幹をイメージできるようにまるく作ってあります。そのまるみに添うような形の椅子を置き、窓も設けて子どもたちが集まれる場所をつくりました。これは「となりのトトロ」でメイが破れたバケツの底から覗いたら小さいトトロが見えたように、大人たちには見えないものを見てほしい、1階でも2階でもない特別な空間を感じたり、外に特別なものが見えたりする、不思議な場所であってくれたらいいなと思っています。

児童の皆さんの教室は2階から上にあるのですね。2階は1、2年生の教室ですね。

聖学院小学校

2階は「風とルーアッハのフロア」という名前です。不思議な名前だと思われるでしょう。旧約聖書の創世記1章2節に、「神の霊が水の面を動いていた」といるのですが、それを「ルーアッハ」といいます。神の息とか神の霊とか、風と訳されます。また、2章には「主なる神は土の塵で人を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった」と記されています。本校では子どもたちの出入り口は2階にあります。そこには子どもたちをまずこのフロアで、神の息を吹き込まれた存在として迎えたいという思いが込められています。子どもは未熟なものだと考えるのではなく、私たちとは違う文化を携えた人たちだと思うのです。30年後、今の子どもたちが社会を支えていく時、どのようにその状況や環境が変化しているのか、私たちには想像もつきません。私たちは、今の私たちが考える30年後、そこで有効だと思うことを子どもたちにしてあげたいと考えがちです。でも、実は30年後をつくっていくのは子どもたち自身です。そういう思いがあって、子どもたちのことを、私たちと違う文化をもつ人たち、30年後の文化を担っていく人たちとして迎え入れたいと思うのです。 また、「風とルーアッハのフロア」には、聖学院小学校を風通しのよい学校にしたいという思いもあります。今は多くの学校が新校舎を建てるときにオープンスペース型の教室を作り、ワークショップ型の授業を試みていますが、我が校もそれに倣いました。一方通行ではなく子どもたちどうしで意見を交換し話し合っていくことは大切なことです。将来、現実の社会で生きていく前に、守られているこの学校という社会で、そこから何を学ぶかだけではなくて社会に自分の力をどう出していくか、そのことを学んでほしい、いつも子どもたちをルーアッハに満ちた空間に迎えたいという思いがあります。

3階は3、4年生の教室と図書室の階ですね。

聖学院小学校

図書室を真ん中に配置しました。すべての学年の子どもたちが訪れやすい場所にあります。そして、この階を「学問と知恵のフロア」と名づけました。学校で大いに学んで、知識を得てほしい。そして、その知識を知識のままで終わらせず、知恵にまでしてほしい。学校を、社会をよくするためにどうしたらよいか、友だちやまわりの人々と知恵を使って力を発揮し、生き生きした社会をつくっていく、そういう願いをこめて名づけています。図書室を気に入っている子どももとても多いです。

最上階は5、6年の教室と音楽室がありますね。

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この階は中心に音楽室があって、「音と光のフロア」と名づけました。音楽室があることや最上階で光がよく入ることもありますが、名前に込めた別の意味があります。子どもたちは学校で、今まで人間が築いてきたものを学んでいきます。それはある枠組み、型と言ってもいいでしょう。その枠組み、型を超えて自分なりの生き方を生み出すことにつなげていくのは、その型を学んだ者だけができることです。型破りという言葉がありますが、型が何かを知らなければ破ることはできないでしょうし、新しい枠組みを創造することもできないのです。本当に自分らしく生きていくというのは、型を知らない者が型を破ろうとする独りよがりの生き方ではなくて、よく学んだ人間がここを変えていけば自分らしい生き方ができるのではないかと、上手に自分の形を生み出していける、そのように型を超えていってほしいという思いで「音と光のフロア」と名づけました。

もうひとつの階段室−。

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階段室は4階で終わりなのですが、実は屋上に行く階段のところにも踊り場があります。階段室は根っこから始まり、ケヤキ、樫、イチョウ、白樺など木の名前がついていますが、屋上に行く踊り場だけ色を青にして「きぼう」という名にしました。それは6年間をしっかり過ごしたうえで次のステージに希望のうちに羽ばたいてほしいという願いを込めたものです。6年間の守られた学校社会の中で1年生なら1年生、6年生なら6年生、だんだんに成長していくというより、そのときそのときで出せる力の出し方でこの社会を本当に楽しい豊かなものにしてほしい、そういう活動ができる場所としてこの校舎を作りました。また、校舎のいたるところに、子どもたちの作品を飾る場所を設けました。校舎はひとつの変わらない建物ですが、そのときそのときの子どもたちの作品が加わることで、今しかない子どもたちの色と音で彩られた、生き生きとした空間になってくれることを期待しています。子どもたちが生き生きと過ごし、明日もまた来たいと思ってもらえるような校舎であり続けたいと願っています。

聖学院小学校

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